2011.01.31
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1月30日TechWaveさんに掲載された記事です。湯川さんありがとうございました。
MIDEMというイベントを皆さんはご存知だろうか。おそらく音楽業界に精通した方じゃないとその名を聞くことはないと思う。MIDEMとは"Marche International du Disque et de l'Edition Musicale"の略であり、毎年1月下旬に南仏のカンヌで開かれている、音楽業界最大の展示会の一つだ。1967年に始まってるから40年以上続いていることになる。世界中からレコード会社、音楽出版社、マネジメント会社、小売りチェーン、音楽ジャーナリスト、そして新たな音楽ビジネスに携わるテクノロジー会社が一堂に集まるイベントだ。
皆さんもご存知の通り世界の音楽市場、というより旧来のCD市場は下降の一途を辿り、IFPI (International Federation of Phonogram and Videogram Producers)によれば2010年のパッケージ音楽の売上げは2009年に比べて13%縮小している。その代わりデジタル音楽の売上げは全音楽市場の約25%を占め、そのシェアは上昇するばかり。
筆者も長いこと音楽ビジネスに関わってきたが、90年代後半から違法ダウンロードの脅威にどう立ち向かうかというテーマで業界全体が躍起になっていたが、その後iTunesや着うたの浸透でむしろデジタルを前向きに捉え、そしてソーシャル時代に突入した今はアーティストと音楽のファン・コミュニティーをどのようにして作り上げ伸ばして行くかというテーマに音楽業界全体が取り組んでいる。
MIDEMも新たな時代に照準を合わせ、旧来の音楽カンファレンスに加えて、数年前から音楽に関連する新しいテクノロジーを披露する場としてMidemNetという部門を設けている。そのMidemNetへの日本からの参加者が少ないということで、MIDEMの開催者であるReed MIDEM社より依頼を受け、弊社が日本における代理人業務を請け負うことになった。まずはこの目で見てみないことには何も始まらないということで、Reed MIDEM社に招待されてカンヌに赴いた。

ニース・コートダジュール空港から約20キロ離れた美しい港町のカンヌ。港に停泊する豪華なクルーザーやヨット、海岸沿いの大通りに立ち並ぶ高級ブティック、レストラン、ホテル・・・やはりあの映画祭で有名な町なだけに何ともセレブな場所だ。MIDEMが開催されるPalais des Festivals et des Congresという大型施設はカンヌ映画際にも使われている。よくテレビや雑誌で見かけるレッドカーペットの行き先がPalaisだ。
MidemNetは大きく分けると大ホールで行われるキーパーソンによる基調講演とパネルディスカッション、音楽業界関係者に向けてプロモーションや配信方法など様々なテーマでデジタル手法を伝えるMidemNet Academy、そして最新のデジタルサービスを披露するMidemNet Labに分かれている。とにかくイベントが目白押しなので全てをカバーするのは不可能。MidemNet Labを中心に出席し、いくつかの大ホールでのパネルも見る、という日程を組んだ。
MidemNet Labのメインイベントは何といっても、最新の音楽系ベンチャーが各々のサービスをVCのパネルに向けてプレゼンをするPitch Sessionだ。モバイルアプリ、B2B、B2Cという3カテゴリーで最終選考に残った計30社がそれぞれ持ち時間5分でプレゼンをし、パネルから厳しい質問攻めに合う。過去にはここから出来て間もないMobile RoadieやSongkickが出てきたと聞く。
最終選考に残った30社をご紹介しよう:
モバイルアプリ部門
B2B部門
B2C部門
各部門とも「これはすごい」と納得できるものから「絶対失敗するだろうな」と疑問符がつくものまで、ピンキリだ。大きな流れとしては、「アーティスト専用モバイルアプリやFacebookファンページを作れるDIYプラットフォーム」「ソーシャルでのデータを見やすく表示してくれるダッシュボード」「ソーシャルで大量に流れる音楽をキュレートしてくれるサービス」という分類が出来るように思えた。
その中で「これはすごい」「いいかも」と思えたのものを幾つかご紹介したい。
Jammbox (http://www.jammbox.com/)
オーストラリアの会社だが、このプレゼンの1週間前にDiscovrというiPad用のミュージックアプリをリリースしたばかりで、このアプリが世界各国のApp Storeのミュージック部門でトップセラーとなっている。ただ、CEOによればDiscovrは彼らにとってサイドプロジェクトに過ぎず、現在開発に力を入れているのがJammbox MagazineというiPad用の音楽マガジンだそうだ。Flipboardに音楽版といってもいいと思う。Discoverを見る限り、UIデザインに長けている集団。リリースは近日中ということで、とても楽しみだ。
Interlude (http://www.interlude.fm/)
アメリカで登記をしているが開発はイスラエルで行っている会社。動画に選択ゲーム性を与え、結果的に視聴者一人一人が違うバージョンの動画作り上げ、それを友達とシェアできるというプラットフォーム。言葉では説明できないので彼らのサイトの掲載されている使用例を是非試して欲しい。音楽PVや広告動画としても面白い使い方が出来そうだ。
Next Big Sound (http://www.nextbigsound.com/)
Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアにおけるアーティストの動向を計り、見やすいUIで表示してくれるダッシュボード。同様のサービスは他にもあるが、ここのは非常に見やすく分かりやすい。最初の14日間は無料なので試しに日本のレーベルやマネジメントも使ってみるべきなのでは。
RootMusic (http://www.rootmusic.com/)
BandPageという、Facebook最大のアーティスト用ファンページのDIYサービス。何と7万以上のファンページがこのBandPage経由でFacebookに作られている。Rihanna、Prodigy、50 Centなど超大物アーティストもこのサービスを利用している。
Shuffler.fm (http://www.shuffler.fm/)
オランダで数ヶ月前に立ち上がったばかりのベンチャーだが、数多くある音楽ブログでストリーミングされている音源をキュレートし、一つのネットラジオにしてしまうという、コロンブスの卵のようなアイデア。一週末をかけて作り上げたという。こんなシンプルなアプローチでもうまくキュレートすれば良いメディアが生まれる。
そして最終日に発表された各部門の優勝者だが、大方予想通りの結果となった。モバイルアプリ部門がJammbox、B2BがNext Big Sound、そしてB2CがShuffler.fmだ。この3つのベンチャーはそれぞれの部門で優勝したことによってより多くのレーベルやVCの注目が集まることになる。事実、発表会の直後のネットワーキングセッションでは3人のCEOと一言挨拶をしようと、多くのジャーナリスト、VC、レーベル関係者などが長い列を作っていた。
Foursquare創始者のNaveen Salvadurai、Vivendi CEOのJean-Bernard Levy、そして日本からも夏野剛さんが基調講演やディスカッションに登場していたが、筆者が出席したディスカッションの中で一番面白いと感じたのがフランスの有名DJ・プロデューサーのDavid Guetta。Guetta氏はアルバムをこれまでに300万枚以上売り、年間150ものギグのために世界中を飛び回っている。そしていち早くFacebookに力を入れ、現在は1500万人以上のファンが彼のファンページを"like"、その数は未だ毎月100万単位で増え続けているのである。「アーティスト公式HP」なるものに力を入れるのが定石だが、彼ははっきりと「HPよりもFacebookが大事だということに何年も前に気づいた」と言い切り、選任スタッフも据えて様々なコンテンツをFacebookに提供したきた、と説明していた。何しろ何年も前から「ファンコミュニティーを作り上げ、対話をしていく」というのが音楽ビジネスの基幹だ。要するに音楽ほどソーシャル時代に合うコンテンツビジネスは無いはずなのだ。
日中のイベントをこなし、ヘトヘトになって会場を出ると、今度は楽しい夜のイベントが待っている。会場のPalaisはもちろん、カンヌの町中のレストランやバーがライブ会場に姿を変え、世界各国から集まったアーティストが夜な夜なパフォーマンスを繰り広げている。カンファレンス会場で、そしてライブ会場で世界各国の音楽とテクノロジー関係者と出会い、次のビジネスに繋がるチャンスが生まれる。音楽コンテンツホルダーとテクノロジープラットフォームが結びついて新しいビジネスが次々と生まれる。筆者も実際にMIDEMで出会った幾つかの会社と長期的な提携について今後話し合うつもりだ。
前段のPitch Sessionに残念ながら日本からのベンチャー企業が登場していない。勿体無いことだ。日本にも世界を舞台にサービス展開を狙うベンチャーがいるはず。彼らにもこのMIDEMに積極的に参加してもらい、ステップアップの機会にしてもらいたい。
南仏の美しい風景と食事が楽しめる環境の中で新たなビジネスチャンスに繋がる多くの出会い・・・MIDEMはそんな素晴らしいイベントだ。
2012年度MIDEMにご興味のある方はinfo@orinoco.jpまでお問い合わせください。
MIDEM日本語サイト:http://www.midem.jp
MIDEM英語サイト:http://www.midem.com
MIDEM YouTubeチャネル:http://www.youtube.com/midem
2011.01.24
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MIDEM二日目。昨日は大ホールでのパネルに張り付いていましたが、今日は趣向を変え、隣のMidemNETエリアを攻めました。
一番注目していたPitch Sessionが本日いよいよ始まりました。これより3日間、世界から集まった30余りの音楽テクノロジー系のベンチャーがVCのパネルの前で自分のサービスを紹介し、そして厳しい質問攻めに合う、という形式です。ここから過去にMobile RoadieやSongkickなどが出てきた、と聞いています。
第一回目は"モバイルアプリ"というテーマ。各企業の持ち時間は5分です。
一発目はフランスから
二社目、ロシアからAmidio。 次にUKからBounce Mobile オーストラリアのJammbox アメリカからMix Me In アメリカからNearVerse フィンランドからPlaymysong ドイツのSongpier 最後にフィンランドのSteam Republic 以上でピッチセッションの一日目が終了。「音楽をリミックスして遊ぶアプリ」「アーティストがDIYでモバイルアプリが作れるソリューション」と大きく分類できるようです。後者は難しいと個人的に思います。アーティストはDIYに向いていないのです。前者については、「音楽で遊ぶ」というコンセプトがGuitar HeroやRock Bandの大成功に見られるように実証済みですから、面白いものがヒットする可能性も否定できません。 Pitch Sessionの後はソニーミュージックパブリッシングの大竹健社長、ウェブプロモーターのBenny Rubin、ソニーミュージックネットワークの方々とランチ。 午後は展示会を回り、SoundcloudによるMusic Hackdayなるイベントについての説明を聞きました。欧米の各都市で定期的に、様々な音楽サービスに付随するAPIを駆使して面白いアプリケーションを作るHackdayを開催しているそうです。まだ日本の音楽カタログにアクセスできるAPIが少ないので早いかもしれないですが、東京でもやって欲しい!そのHackdayから出現した面白いアプリの例として、The Swingerが紹介されていました。どんな曲でもスイング調に変えてしまいます。最高です。Dire StraightsのMoney For NothingやPrinceのCreamなんて、オリジナルより良いのでは? また、ファンコミュニティ作りで大成功しているLinkin Parkのデジタル戦略チームが、その手法について説明する会にも出席。アーティストマネージャーやレーベルが真剣に聞き入っていました。このセッションで最も印象的だったのは、「限定コンテンツやグッズは効果がない。一番大事なのはアーティストとファンの交流を深める仕組みを作ること」と彼らが強調していたことです。 以上、盛りだくさんのMIDEM二日目でした。三日目は引き続きピッチセッションとカンファレンスに出席してきます! 1/24
ミュージシャンやDJ向けのアプリを作成している会社のようですが、ここでは.loopjという、ループを自動的に作成してくれるアプリを紹介していました。アプリ自体は面白そうでしたが、monetize方法や仕組みの説明がよく分からないプレゼンでした。
Fireplayerというトラックを自由にリミックスしてシェアできるアプリの紹介。現在はUKのアプリストアから購入可能。既にUniversalやEMIと契約済みで、今後も各レーベルとアーティストにアプローチするとのこと。面白そうなので、早くUK以外にも広がって欲しい。ただ、パネルからは「レーベルへのライセンス料が高いでしょ?どうやってmonetizeするの?無理でしょ?」という厳しい指摘が。
何だか凄いプレゼンでした。スライドが殆どなし。1週間前にDiscovrというiPadアプリ)を発売し、瞬く間にアプリストアのトップセラーになった、という力強い事実をまず紹介。CEOの「面倒くさいけど、まあ、紹介してやるよ」みたいな斜に構えた態度が余計インパクトを与えていました。しかもこのDiscovrは単なるサイドプロジェクトに過ぎず(「ちょこっとこのアプリをやっただけで黒字化しちゃったよ、へへん」という態度)、肝入りのサービスは今後発売予定のJammbox Magazineという、iPad向け音楽雑誌アプリらしいです。内容は全く明かしてくれませんでした。経営陣も経験豊からしく、ここは要注目かもしれません。
これもBounce Mobileのように、曲をリミックスしてシェアできる、というアプリ。Taylor Swiftともコラボで5万DLの実績を作ったそう。ただし、CEOの都合がつかず、投資家が急遽代役で登場・・・。プレゼン自体はめちゃくちゃでした。
LoKastというアプリの紹介。要するに、例えばライブに行ったら、同じ場所にいる人々とそのライブのアーティストに関するメディアや情報をシェアできる、という内容。正直ちょっと厳しいかな、と思いました。ライブに行っても、このアプリをDLしてる人が一体何人いるのでしょう・・・。パネルからも「このコンセプトに賛同し協力してくれるアーティストは一体どれくらいいると思うか?」「そもそもライブに行ったらメディアをシェアする時間なんてあるの?」と厳しい質問が飛び交っていました。しかもmonetizeの方法についてはまだ全く考えてない、というVC向けピッチでは最もやってはいけない返答・・・。
この会社のご紹介の前に、「フィンランド」について一言。今回のピッチセッションの30社中、5社がフィンランド発なのです。本日はそのうち2社がプレゼンをしましたが、いかにも「白夜の中でカフェインを大量摂取しながら徹夜でコーディングしてそのまま来たぜ!」というようなクレイジーな目つきが印象的でした。クレイジーとクリエイティブの狭間を攻めて来る面白いベンチャーが出てくるお国柄なのか?偏見?
そしてこのPlaymysongですが、「Barと音楽」に注目し、ソリューションを提供していく、と。ジュークボックスに取って代わるサービスですね。提携しているBarの中であれば、iPhoneから曲のコレクションをブラウズして、好きな曲を選んでBarで再生させる、という内容。一体どの程度の飲み屋さんがこのサービスを導入してくれるか、という勝負だと思いますが(使用料は年間300ユーロほど)、広がるイメージが湧きませんでした。
アーティスト向けアプリソリューション。Mobileroadieと同じ、ただしまずは無料。monetize方法についての言及は無し。サイトを見ても説明がありません。パネルからも相当突っ込まれてました。
こちらもMobile Backstageというアーティスト向けモバイルアプリのソリューション。多いですね、このモデル。その中ではMobileroadieが抜きん出ていますが、このように同様のサービスがどんどん出てきています。
Cannes, France
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